和久さぁ〜ん…。

と、青島刑事の物まねをしながらつぶやいてみる。いかりや長介といえば、圧倒的に和久さんなわけで、本放送からの踊る大好きっ子であった自分としてはなんというか、さびしいことこの上ございません。

今でこそ、日本の家庭に笑いをもたらしたすばらしい番組であったかのように語られる「8時だヨ!全員集合」でありますが、僕らの世代にとってテレビでドリフを見ることは、戦いでもあったと思う。当時、マンションや団地のほとんどの(子どもがいる)家庭の玄関口には、「俗悪番組を追放しよう!」というステッカー(あの忌まわしい、すべてを拒もうとする手のひらマーク!)が貼られ、ちょっとだけよ、ヒゲダンス、さいしょはグーといったドリフのギャグを真似する僕達は、ありとあらゆる局面で有形無形の圧力を受けていたものだった。

出演者が警察沙汰を起こそうものなら、PTAはこれみよがしに攻撃を開始するのだけれど、ドリフターズは出演できないメンバーの代わりに、椅子を相手に飄々とコントを続け、僕らはその軽やかな身のかわし方に心躍らせた。

そしていつしか、もっと俗悪な(!)ひょうきん族に世間の関心がむくようになり、気がつくとドリフターズを目にする機会も減っていった。

今ではドリフターズも、ビートたけしも批判の矢面に立たされるようなことはなく、時に文化人としてもてはやされたりまでする。あの頃、あの馬鹿げた追放運動に熱を上げていた人々はいま何を思っているのだろうかと、テレビ画面で笑う、元気な長さんの顔をみて考えた。